『呪われた家の秘密』
2025/01/11
『呪われた家の秘密』
※この物語はフィクションです。
第2話:隠された記録
田中は、その場に立ち尽くしていた。
リビングルームの中央に立つ黒い影。
だが、次の瞬間、影はふっと消えた。
「……なんだ、今のは……。」
恐怖と困惑が入り混じった表情で、田中は額の汗を拭った。まるで自分が何かに見られているような感覚が、ずっと背後に張り付いている。
「幻覚……? それとも……。」
田中は不安を振り払うように頭を振り、屋敷内の調査を続けることにした。新人とはいえ、任された仕事だ。このまま手ぶらで帰るわけにはいかない。
「ここには何かある……だから、誰もこの物件を買わないんだ。」
田中は意を決して、屋敷の2階へと向かった。
2階への階段
階段は古びており、一歩踏み出すごとにギシギシと音を立てる。
「さすがに、リフォームが必要だな……。」
そんなことを呟きながら階段を上がる田中。しかし、途中でふと気づく。
——階段の手すりに、何かが刻まれている。
田中は足を止め、手すりをよく見た。
そこには、奇妙な記号が彫り込まれていた。まるで暗号のような、何かのシンボルに見える。
「……これ、何だ?」
よく見ると、その記号は階段全体に繰り返し刻まれていた。誰が、何のためにこんなものを彫り込んだのか。田中は手すりをなぞりながら、頭を悩ませた。
だが、今はその答えを出すことよりも、調査を進める方が先だ。田中は階段を登り切り、2階の廊下に足を踏み入れた。
謎の扉
2階は1階よりもさらに不気味だった。
廊下は薄暗く、窓から差し込む光もほとんどない。古い壁紙は剥がれ落ち、空気には埃の匂いが漂っている。
田中は一つ一つの部屋を確認していった。しかし、どの部屋も空っぽで、特に目立った異変はない。
——そう、あの部屋を見つけるまでは。
廊下の突き当たりに、一つだけ異様な扉があった。
他の部屋の扉と違い、その扉は黒く塗られており、重厚な金属の取っ手が付いている。まるで、何かを閉じ込めるための扉のように見えた。
「……何だ、この扉は。」
田中は恐る恐る取っ手に手をかけた。しかし、扉はビクともしない。
「鍵がかかっているのか……。」
田中が扉を調べていると、ふと足元に何かがあるのに気づいた。
それは、一冊の古びたノートだった。
古い日記
田中はノートを手に取り、埃を払いながら表紙を開いた。そこには、びっしりと手書きの文字が書き込まれていた。
『○○年○月○日』
日記の形式で、過去の出来事が記されているようだ。田中は興味を惹かれ、ページをめくり始めた。
——最初の数ページは、普通の生活が綴られていた。
『今日は家族で夕食を楽しんだ』
『庭に新しい花を植えた』
『息子が風邪をひいたが、すぐに回復した』
しかし、ページを進めるごとに、内容が徐々に不穏なものへと変わっていく。
『○○年○月○日』
『屋敷の中で、誰もいないはずの部屋から声が聞こえるようになった』
『夜中になると、廊下を誰かが歩く音がする』
『家族の様子がおかしい。まるで何かに取り憑かれているようだ』
田中の手が震え始めた。
「これ……まさか……。」
さらにページを進めると、最後の記述が目に飛び込んできた。
『もうすぐ、我々も姿を消すだろう。呪いは本物だ。もしこの日記を見つけた人がいるなら、この屋敷からすぐに逃げろ』
田中はその一文を読んで、思わずノートを閉じた。
「呪い……?」
胸がざわつく。
突然——
ドンッ!
黒い扉が大きな音を立てた。まるで中から誰かが叩いているかのようだった。
「……誰かいるのか?」
田中は恐る恐る扉に近づいた。
再び——
ドンッ! ドンッ!
扉が激しく叩かれる音が響く。田中は立ち尽くした。
その時、廊下に響く声が聞こえた。
「お前も……消えるんだ……」
田中は叫び声をあげ、階段へと駆け戻った。
——だが、階段の下には、別の影が立っていた。
その影が、ゆっくりと田中の方へ近づいてくる。
「……嘘だろ……。」
田中は恐怖に駆られ、再び2階の廊下を駆け抜けた。しかし、背後の扉が激しく叩かれる音が、いつまでも耳にこびりついて離れなかった。
~~~ 続き ~~~