『呪われた家の秘密』
2025/01/14
『呪われた家の秘密』
※この物語はフィクションです。
第4話:封印された記憶
田中は息を切らしながら、2階の廊下を駆け抜けた。背後からは扉を叩く音と、不気味な囁き声が追いかけてくる。
「逃げなきゃ……でも、どこへ?」
彼の頭の中は混乱していた。しかし、廊下を走るうちに、ふと一つの扉が目に留まった。
——そこには、これまで見落としていた、小さなドアがあった。
「こんな場所に扉が……?」
田中は恐る恐るドアの前に立ち、ノブに手をかけた。驚くことに、その扉は鍵がかかっていなかった。
「開く……?」
ドアを押し開けると、そこには狭い階段が続いていた。下へと降りる階段だ。
「地下室……?」
田中は迷う間もなく、階段を降りていくことにした。
地下室の秘密
階段を降りると、冷たい空気が田中の肌を刺した。地下室は薄暗く、古びた家具や箱が乱雑に置かれている。
「ここには、何が隠されているんだ……?」
田中は部屋の隅々まで目を凝らして見渡した。すると、壁の一角に、古びた大きな鏡が立てかけられているのに気づいた。
「鏡……?」
鏡の表面は埃にまみれ、全体像はよく見えない。しかし、田中がその鏡に近づき、手で埃を払うと——
鏡の中に、誰かが立っているのが見えた。
「うわっ!」
田中は思わず後ずさりした。しかし、振り返っても、そこには誰もいない。
再び鏡を見ると、鏡の中の人物は、田中自身だった。
「なんだ……自分か……。」
ほっと胸を撫で下ろしたのも束の間、鏡の中の“田中”が、突然、不自然な動きを見せた。
——鏡の中の田中が、こちらに向かって微笑んだ。
「……え?」
田中は凍りついた。
鏡の中の田中は、現実の田中とは違う動きをしている。まるで、自分とは別の存在のように。
「お前は……誰だ?」
田中が問いかけると、鏡の中の田中が口を開いた。
「ようこそ、呪われた家へ。」
その声は低く、冷たい響きを持っていた。
「俺は田中だ……君は、誰なんだ?」
鏡の中の田中は、不気味な笑みを浮かべたまま言った。
「君はまだ気づいていないのか?
この家は、過去を飲み込む。そして、未来も飲み込む。」
田中は頭を振った。
「何を言っている? 俺はただの不動産エージェントだ! こんな呪いなんて——」
「逃げられない。」
鏡の中の田中が、静かに告げた。
「この家は、君を選んだんだ。」
地下室の箱
その時、田中の視線が、部屋の片隅にある古びた木箱に向いた。
「……何だ、あれは?」
田中は鏡から目を離し、木箱へと歩み寄った。箱には古い錠前がついていたが、長年の劣化で錆びついており、簡単に開けられそうだった。
田中が錠前を外し、箱の蓋を開けると——
中には、古びた手紙と写真が入っていた。
「手紙……?」
田中は手紙を手に取り、ゆっくりと開いた。
『この家に足を踏み入れた者へ』
最初の一文を読んだ瞬間、田中の心臓が跳ね上がった。
『この家は、生きている。過去に取り憑かれ、未来を喰らう。逃げられると思うな。この家に囚われた者は、皆、同じ運命を辿る。』
田中の手が震えた。
「……これを書いたのは、誰だ?」
手紙の最後には、署名が記されていた。
『古峯一族 最後の生存者』
田中は手紙を握りしめ、地下室の冷たい空気に包まれた。
その時、再び鏡の中の田中が、声を上げた。
「さあ、時間がないぞ。秘密の部屋を見つけなければ、君もここに囚われる。」
田中は鏡に向かって叫んだ。
「秘密の部屋はどこなんだ!?教えてくれ!」
しかし、鏡の中の田中は、ゆっくりと消えていった。
次の一手
田中は決意を新たにした。
「この家の謎を解かなければ……俺はここから出られない。」
彼は地下室を後にし、再び屋敷の探索を始めた。
その背後で、誰かの声が囁く。
「秘密の部屋は、すぐ近くにある……」
田中は振り返ったが、そこには誰もいなかった。