『呪われた家の秘密』
2025/01/17
『呪われた家の秘密』
※この物語はフィクションです。
第7話(最終話):永遠の解放
田中が闇の中へと足を踏み入れると、空気が一変した。
「ここは……どこだ?」
目の前には、真っ白な空間が広がっていた。時間も音も、すべてが消え去ったような不思議な場所だ。
「田中君、ようやくここまで来たか。」
不意に、優しげな声が響いた。
振り返ると、そこには隆一の影がいた。しかし、彼の姿はもはや暗い影ではなく、生きていた頃の姿をしていた。
「あなたが……古峯隆一?」
隆一は頷いた。
「そうだ。私はこの家に囚われ、長い間、この呪いの中で彷徨っていた。」
田中は深く息を吸い込み、問いかけた。
「この呪い……どうしてこんなことになったんです?」
隆一は少し悲しげに微笑んだ。
「それは、私たち古峯一族が犯した罪の報いだ。」
古峯一族の罪
隆一は語り始めた。
「私たちの先祖は、この土地を力づくで奪い取り、村人たちを追放した。抵抗した者たちは殺され、彼らの怨念がこの土地に染み付いた。」
田中は拳を握りしめた。
「その怨念が……この家を呪ったんですね。」
隆一は静かに頷いた。
「私たちはその呪いに気づかず、次々とこの家に囚われた。家族も、友人も、皆この呪いの犠牲となった。」
田中は、箱の中にあった鍵を見つめた。
「……でも、この鍵で呪いを解くことができるんですよね?」
隆一の表情が一瞬曇った。
「そうだ。しかし、呪いを解くためには、すべての魂を解放する覚悟が必要だ。」
「覚悟?」
隆一は、田中の目をじっと見つめた。
「この家に囚われた魂たちは、全員解放される。しかし、その代償として——お前がこの家の新たな番人となるのだ。」
田中は息を飲んだ。
「俺が……番人に?」
隆一は頷いた。
「そうだ。呪いを解くためには、家の記憶を受け継ぎ、二度と同じ過ちが繰り返されないように見守る者が必要だ。」
田中はしばらく黙り込んだ。そして、ゆっくりと口を開いた。
「……俺が、やります。」
呪いの解放
田中は鍵をしっかりと握りしめ、白い空間の中央に現れた扉へと歩み寄った。
「これが……最後の扉。」
鍵を差し込み、ゆっくりと回す。
ガチャ……。
扉が開いた瞬間、まばゆい光が田中を包み込んだ。その光の中から、たくさんの人々の姿が浮かび上がった。
「ありがとう……ありがとう……。」
それは、この屋敷に囚われていた魂たちだった。彼らは次々と光の中へと消えていき、解放されていった。
田中はその光景を見つめながら、静かに呟いた。
「これで……終わったんだ。」
しかし、光が消えると同時に、田中の体はその場に崩れ落ちた。
「田中君……。」
隆一が近づき、田中の肩に手を置いた。
「君は、よくやった。」
田中は微笑んだ。
「これで……皆、自由になれたんですね。」
隆一は頷き、静かに語った。
「君は、この家の新たな番人だ。しかし、君の役目は、見守ることではなく、導くことだ。」
田中は目を見開いた。
「導く……?」
隆一は優しく微笑んだ。
「そうだ。新たな住人がこの家に足を踏み入れた時、彼らが同じ過ちを繰り返さないように、君が導くのだ。」
田中はゆっくりと立ち上がり、扉の前に立った。
「俺が、この家を守る……。」
最後の囁き
屋敷の外では、新しい買い手が現れた。
「ここが、噂の古峯町の屋敷か……。」
新たな住人が扉を開けたその瞬間、かすかな声が聞こえた。
「ようこそ……呪われた家へ。」
——完——